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岡山地方裁判所 平成元年(ワ)239号 判決

原告

小山國興

被告

鈴木幸男

主文

1  被告は、原告に対し、金六三万九三一五円及びうち金五八万九三一五円に対する平成元年一月一九日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  原告のその余の請求を棄却する。

3  訴訟費用はこれを三分し、その一を被告の負担とし、その二を原告の負担とする。

4  この判決は、原告勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一当事者の求める裁判

一  原告

被告は、原告に対し、金二〇五万九一二六円及びうち金一八五万九一二六円に対する平成元年一月一九日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告

原告の請求を棄却する。

第二事案の概要

本件は、原告が民法七〇九条により、車両の追突事故によるいわゆる物損等を請求するものである。

一  争いのない事実

被告は、平成元年一月一八日午後四時ごろ、岡山市岩田町二丁目三五番地先道路において、普通乗用自動車(岡五七み六四二二、加害車)を運転していたところ、前方不注視、安全運転義務違反の過失により、原告が運転していた普通乗用自動車(岡山三三ろ四二三〇、被害車)に追突した(本件事故)。

二  争点

被告は、損害費目のうち、被害車の評価損及び弁護士費用の発生又は本件事故との相当因果関係を争い、被害車の修理代及び代車料の額を争う。

第三争点に対する判断

一  修理代 五一万九三一五円

原告は、訴外株式会社ダイワモータースに、加害車が追突した被害車の後部の修理のほか、ミツシヨンの修理をさせ、その修理代金合計一一〇万七〇二〇円(後部修理代金五五万七九二〇円、ミツシヨン修理代金五四万九一〇〇円)について減額を受け、訴外株式会社ダイワモータースに合計一〇三万四二〇円を支払つた(甲二の一、二、原告)。

しかし、被害車と約三〇メートルの車間距離を置いて、時速約三五キロメートルで加害車を運転していた被告は、被害車の後方約一三・四メートルのところで被害車が信号に従つて停止するのを発見して、制動をかけたが、路面が濡れていたこともあつて止まり切れず、加害車を被害車に追突させ、そのため、被害車は約〇・八メートル前に押し出された(甲八、九)という本件事故の態様及び結果と被害車はいわゆるオートマチツク車であり(原告)、オートマチツク車の場合、信号待ちのように短時間の停車措置の簡便な方法としてシフトレバーをパーキングレンジに変更する以外にないとはいえないことに照らすと、原告が追突されたときにシフトレバーをパーキングレンジに入れていたか、入れようとしていたという原告の供述は措信できず、したがつて、本件事故の発生と右修理の事実のみをもつては、右ミツシヨンに損傷があり、かつこの損傷と本件事故との間に因果関係があるものということはできず、他にこれを認めうる証拠はない。

そうすると、本件事故による損害としての修理代は、原告が支払つた修理代金一〇三万四二〇円のうち後部修理代金に相当する金額(支払額を減額前の各修理代金額で按分した額)である五一万九三一四円(円未満は切捨て)となる。

二  代車料 七万円

被害車の車名はメルセデスベンツ(四五〇〇CC)であり(乙五)、被告側は被害車の修理中の代車(クラウン、二〇〇〇CC、オートマチツク)の提供を申し出たが、原告は、これを断り(証人田中政裕、原告)、知人からメルセデスベンツ(五〇〇〇CC)を借受けて、その借賃として四二万円を支払つた(原告、甲五)。

しかし、原告が、代車として被告側において申し出た車種ではなく、メルセデスベンツを必要とする事情については、これについて述べる原告の供述には矛盾もあり、この供述をもつて右必要性を認めうるものとは到底いい難く、前記後部の修理の内容、程度(甲二の一)及び後記認定の被害車の使用経過期間なども考慮すると、被告側が申し出た程度の車種をもつて、被害車の修理期間中の代車としては十分であり、また原告において代車を必要とした修理期間は一〇日間とみるのが相当である。ところで、車種がクラウンロイヤルサルーンであると、賃借料は平均日額一万五七〇〇円である(甲三の一、二)が、被告側が賃料を負担して提供を申し出た代車の賃料は日額七〇〇〇円である(証人田中政裕)から、もとより右申出の諾否は原告の自由ではあるが、この提供を申し出た車両が代車として相当のものでないなどの特別の事情のないかぎり、原告においても損害が拡大することを抑止する義務があることを考慮し、かつ損害の公平な負担を図るうえからは、本件事故と相当因果関係のある代車料は日額七〇〇〇円、右期間中で合計七万円とすべきであり、右特別の事情を認めうる証拠はない。

三  評価損

前認定のように、被害車は、本件事故によつて、その後部に損傷をうけたものであるが、被害車は昭和四九年七月二五日初登録され(乙五)、本件事故までに既に約一五年が経過しており、走行距離は九万八四八六キロメートルであること(甲二の一)、本件事故と因果関係がある損傷の修理部分と内容(リヤーバンパー、ランプ類等の取替えで、板金修理はない。甲二の一)、本件車種としての前記修理代金及び修理前後の被害車の外観(乙三の一ないし三、四の一、二)を総合すると、本件事故と相当因果関係のある損害としての評価損が発生しているものとはいえない。

四  弁護士費用 五万円

本件事故(但し損害は物損)と相当因果関係のある弁護士費用は、五万円と認めるのが相当である。

(裁判官 岩谷憲一)

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